星からの贈り物

    かたちあるもの
    いつか
    かたちなきもの
    とわに

    *


 星の瞬きをつつむ
 微かな若緑のひびき
      目をとじれば
       香る ひかり

 

         *

      かがやくもの
    やみに
     とざされたとき
    やみが

 

E Più Ti Penso

花の潮みちて

ひかりあふれ

 

声つつむ翼は

風に舞い

 

太古の海原

かがやき響き

 

青ふかき夜空に

うたを待つ

小さな旅

 駅から家までは十五分とかからないのでいつもは歩くが、荷物の多いときや雨の日は市内循環バスを利用する。十四ある座席もふくめて定員は二十名ほどの小型バスで、乗客どうしの間合いもちかい。初めて席をゆずられたのがこのバスだ。

 冷えこみがつづいたあとの、よく晴れたおだやかな日、乗車し出発を待っていると、母親と、小学校高学年だろうか、息子とおぼしき二人連れが乗りこんできた。

このバスは初めてのようだ。運転手に、一周してまた乗りつづけて、もう一回廻ってもいいか尋ねている。何周してもよいこと、夏場などは空調がきいて涼しいので路線によっては市内見物をする人がよくいることなど、説明をうけている。運転席の裏側に二人がいたので、一番後方の少し高くなっている座席のほうがながめはいいと移動することをすすめている。

そんなやりとりを聞きながら他の乗客も二人の方を見たり、たがいに笑顔で目配せする。

 お年寄りが、自分が行きたい場所の最寄り停留所はどこかと聞いている。このバスではなく、同じこの乗場から、二つ後に出る他の路線に、その停留所はあると大きな声で説明し、乗るときその路線の運転手に確認するよう言いそえ、お年寄りも納得したようだ。

運転席に戻ると乗車ドアとは反対側の窓をあけて身を乗りだし何か叫んでいる。制服姿の若い人が近づいてきた。近くに待機中の、二つ後に発車する路線バスの担当運転手だ。さっきのお年寄りのことを、降りるバス停、目的地を伝えている。

 定刻にバスは動き出し、車内にさしこむ木漏れ陽のなか親子の会話がはずむ。せまい道から大通りに出たところのいつもの停留所でおりる。写真を撮っておきたくなったが、手間取っているうちに、バスは角を曲がり走り去ってしまった。

さくら

 

はるかちきゅうのおくふかく

はるかうちゅうのそらとおく

 

ときをきざんだ はださわり

はなのなみだは かぜのなか

 

はなのあとにはわかみどり

はなのまえにはふかみどり

 

ゆきのころもは べつあつらえ

きんのひかりに たびじたく

 

みあげるひとみに はなこみち

うすいきいろの ぷろろーぐ

 

ひるのさくらは なにをみる

うつむきあるく そのおもさ

 

よるのさくらは なにをみる

とばりをとざす みみふさぐ

 

ひとえふたえに やえもも

かなしきひとの はなうたげ

 

しだれながれてからみあい

やさしきひとの はなのまい

 

さくらさらさらさらさらさくら

さくらくらくらくらくらさくら

Both a little scared                     Neither one prepared

白い花びらは

語りえぬことば

棘をたどり

ふりつもる

 

若草色の歌声は

光つよく朝をつげ

鐘の響きにおくられて

碧き谷間にこだまする

 

扉の鍵は胸のなか

だれもふれえぬ鉛色

祭りのあとの空車

白馬に曳かれ闇をゆく

 

歩みためらう足取りは

地をたしかめるあかし

うけとめるてのひらに

いのちをきざむ紅い花

 

カナリア色の風そよぎ

瞳のなかにうつる影

雪の調べは春さそい

とざされた詩がよみがえる

私への手紙

息をとめてはいきられぬ

ゆっくりしずかにはくことだ

知らないものをはくことだ

抱えていないではくことだ

ゆるゆるゆるゆる

緩んででこないか

はにはにはにはに

柔らかくなる

 

いつものけしきが新しい

いつもけしきは新しい

光りがちがうせいじゃない

影がおどるせいじゃない

夜はいつでもそばにいる

心配するにはおよばない

昼になっても夜はある

明日になっても夜はくる

 

早い遅いはもういらぬ

足ふみしめて土を蹴る

地面の下にはなにがいる

目にはさだかにあらぬとも

こちらをみている草の精

雨がしとしと降ってきた

風がだんだん強くなる

肚の中には土石流

昨日と今日が交ざりゆく

 

 

風に舞い 雨に唄い

若芽の緑は色を深め

陽を浴び 影を与え

紅の羽根となり

乾いた響きを残し

幹に力蓄え

雪にいのち温める

 

蕾微笑み 重く満ちて

ひとつふたつ 綻び

花弁たわわに花祭り

紺碧の空を彩り

手をつなぐ幼な児に

はにかみ色を刻む

子どもは桜の贈り物

咲くは人 人は桜

 

桜の園は花曼陀羅

死者も生者も花宴

枝垂れ桜は春の鞭

空を切り裂き血で染めて

熱き血潮の珠となり

この世とあちらを橋渡す