てんとうむし

黒いものが手の甲で
うごめいている

手を強くふると
テーブルにおちて
足をばたつかせ
ひっくり返すと
指にしがみつく
弾くとおちて
もがいている

ようやく足が下になり
テーブルの端へ移り
見えなくなる

カップに湯をそそぐと
バタバタあばれている
掬うとくっつく
布巾にこすりつけると
歩き出し姿を消した

ティッシュペーパーを
取りだすと
また現れた

五行歌

静かに
坐る
見ることを
歩くことを
奪われても

 

 *

 

床を叩き
泣きじゃくる
そう
立つときは
ひとり

名もなき花

夜空焦がす
鐡花火

生命の水も
枯れはてて

息をふさぐ
熱気流

母を呼ぶ声
子を求む声

うつむく人

降り射す太陽は
光やわらげ
背をあたため

吹きつける風は
冷たさを秘め
頬をなで

突き刺さす眼差しは
深く息をはき
遠くいたわり

静かに照らす月は
顔をあげて歩く
その日をまもる

てのひら

 仕事場近くの居酒屋を、昼は海鮮丼など定食もあるので、ときどき利用する。隣の席の男性が、かなり出来上がっていて、店の奥にいる背広を着た客になにやら絡んでいる。たすき掛けした若い女性の店員が隣の席に近づき、会話は聞こえないが、たしなめている様子だ。
 ほどなく話しかけられた。お医者さんですか。いえ、治療のようなことはやっていますが。世の中、何が足りないと思いますか。すごい質問ですね、思いやりでしょうか。思いやりですか、ことばではなくて。ことばはたいせつですが、そのおおもとの。勉強になりました。
 奥の客が帰るとき、先ほどの店員が謝っている。酔っている男性がトイレに立つと、すいませんねえ、酔っ払っているようでと、こんどはこちらを気遣ってくれる。
食べおわり席を立ち会計しようとすると、いつものように、レジから歩み寄ってきて少し腰をかがめ、両手でお金を受け取って精算してくれた。

星からの贈り物

    かたちあるもの
    いつか
    かたちなきもの
    とわに

    *


 星の瞬きをつつむ
 微かな若緑のひびき
      目をとじれば
       香る ひかり

 

         *

      かがやくもの
    やみに
     とざされたとき
    やみが

 

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花の潮みちて

ひかりあふれ

 

声つつむ翼は

風に舞い

 

太古の海原

かがやき響き

 

青ふかき夜空に

うたを待つ