与えられた経験

舞い降りた手触りは、紅の衣に包まれた過ぎ去らぬ時。薄れかけた旧き文字に哀惜と歓びの詩あり。海原遥か心結ぶ光の街は宝の箱に収まりきらず。鈴鳴らし道行く牛車に花飾り、見上げる梢に朱の鳳、いま飛び立てり。疾く足高く明日を越え極まることなし。受け継がれた微笑みは遍く溢れ心を包み、ふるさとなき者へ帰りゆく地を恵む。ひとりはひとりに非ず、今は永遠のこと。耳を澄ませば遥かな歌声、目蓋閉じれば躍る姿、そこにあり。


フランクル夜と霧』)