雪のソナタ

白き野に原初の音を刻み
織りなす響き地を染める

歩を休めれば花灯り
潤いの匂い寄り添いて

窓辺より冬の祈り零れ
はく息鎮み風に結ぶ

穿ち尽くせぬ年の輪ひとつ
はるか来し方の空を眺む

屋根に降り積む訪れに
動かざる心ふと明日を夢見る

漆黒の炎に
深淵の宴あり

日々を引き受けし背に
顔を上げ胸を開く

遠くを眺むる者を
見守る静かなる眼差し

節くれ立つ指に応える
微かなる揺らぎ

地の底より
飛び立てる翼あり

道は果て無し
今も果て無し

小林秀雄ゴッホの手紙』十九頁)