荘厳する聲

  藍色の空の下、一面の眩い緑の芝生に、色鮮やかなジャージー姿の子どもたちが走り廻り歓声をあげる。

 

  散歩に出る園児たちの「ハーイ」という声が、保育園の玄関一杯に響き渡る。

 

  赤ん坊の突き抜けるような泣き声が、コミュニティーバスの小さな車内を震わす。

 

  夜中ふと目を覚まし不安に駆られた子どもの呼ぶ声が、離れた部屋にいる母親に届く。

 

 

  あの聲はどこに行ってしまったのだろうか。失われてしまったのか。いや、失われてはいまい。

 

  耳を澄せ、今。

 

<『ちよう、はたり』志村ふくみ>