2015-02-02 荘厳する聲 藍色の空の下、一面の眩い緑の芝生に、色鮮やかなジャージー姿の子どもたちが走り廻り歓声をあげる。 散歩に出る園児たちの「ハーイ」という声が、保育園の玄関一杯に響き渡る。 赤ん坊の突き抜けるような泣き声が、コミュニティーバスの小さな車内を震わす。 夜中ふと目を覚まし不安に駆られた子どもの呼ぶ声が、離れた部屋にいる母親に届く。 あの聲はどこに行ってしまったのだろうか。失われてしまったのか。いや、失われてはいまい。 耳を澄せ、今。 <『ちよう、はたり』志村ふくみ>