細く微かなもの

 背中から腰と脚にかけ激痛が走り、起き上がるにも坐るにも歩くのにも、痛みに耐えながらようやくという状態が続き、一時はこのまま動けなくなるのではないかという怖れすらあった。安静といわれ、とにかくできるだけ外出しないようにしているうち、重だるくヒリヒリする感触は残るものの、階段を踏みしめる足を下から支えてくれるような確かな兆しがあり、軽く身体を動かすと蠢くような力の芽生えが広がり心地よさを覚えた。久しぶりに少し歩いてみたくなり、近くの遊歩道を散策する。道のところどころに鬱蒼と葉を茂らせている、幹の直径が一メートルはありそうな巨きな樹は、天に向かい歩いているかのようだ。細く微かで確かな歩みは、そのはたらきを誇らない。