天の水 分かつ

風笛に導かれ漆黒の闇を進む光の珠、銀の毒水を代わり受け、麗明の海に逝きし者の歩みか。天透ける女人の鎮魂歌、言葉奪われし影達の眼差し篤く包みて、古の黒き輝石の邑に染み入り、語る言葉その姿ひそめ語らざるものとの旅に誘う。水を分かつ地に育まれし童女は、息を閉ざす殻に覆われし美しき星を愁い惑い哭してひとり坐し、冷たき風に揺れる葦となることを預かる。膝に軽き子を守る煩悩深き翁、かそけき肌伝う温もりに己の魂魄護られ、陽射し享ける畳には恵みの音なわざることなし。地に花弁を希む指は祈りの刃となり、引き裂くは天空の動かざる時。深海の底に囚われ臥す人が見るは絶対零度の宙か蓮花の園か。凪に磯遊びし、もてなし集うものの差し延べる手を愛ずる。小さく弱きものなれど、天の鼓動遍く始原の海よりの使者なり。その遥かなる託けに黙し、織り成す波風に揺り出され、曇ることなき瞳携え旅立ちし姿想い、こころ静まりいのち咲く時来たれとただ俟つのみ。