手紙

 光に祝福された街。その地を去ることを余儀なくされた母の、誰の眼にも触れ得なかった手記は、愛惜の情に満ち溢れていた。

 

 中国語訳と原本が在籍していた女学校の創立百周年記念に展示される。卒業した小学校で古い学籍簿と対面した。メディアに載り、また姉妹校提携の橋渡し役を仰せつかった。

 

 届いていたのだ、恋歌は。時空を超え彼の人々の心の糸を爪弾き、新たな歌が紡がれていく。言の葉は光のなかに佇み優しく微笑んでいた。

 

<『こころ』夏目漱石