待つ

待つ

 

 23年前父が心筋梗塞で急逝。

 留学準備中で、TOEFLの成績も基準スコアを超え推薦文も受取り、会社にも退職を伝え業務引継ぎ中というときであった。高齢の祖母の面倒を母ひとりでみるのは難しいと判断し留学を断念した。

 会社に戻る氣にもならず、語学を活かした仕事に就こうと動いてみたが何か心許なく、そんなとき体調を崩した。発熱して全身に赤疹が広がり、平熱になってもしばらく怠さが取れなかった。

 朦朧としていた頭に思いが浮かんだ。

 自分のことばかりで好き勝手し放題だったな・・・他人のために何かするときではないのか。

 体調が戻り、20年ぶりに合氣道で少し身体を動かそうと、ある道場を訪れた。そこで「氣圧療法」を知る。すぐに本部へ行き、3日で養成学校への入学を決断した。学費金額ちょうどの現金も偶々手元にあった。

 これが、待っていたものだと、迷いはなかった。

 

<『ドゥイノの悲歌』リルケ