光の経験

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 5月に母が急死。

 悲しみの底の時、赤い和紙の表紙、茶色くなった紙に綴られた、子ども時代の台湾を偲ぶ手記を発見した。呼応するように、その頃の写真を初めて見る機会も得た。知らなかった、真っ黒に日焼けし満面に笑みを湛えた元氣溢れる母がいた。そしてさらに、生後間もない母の写真にも出会う。祖母に抱かれ右手の指先を立て、陽射しを浴び眩しいのか眠いのか目を閉じている。

 手記に心躍り写真に涙した。母は光であった。

 

<『生きがいについて』神谷美恵子