てんとうむし

黒いものが手の甲で
うごめいている

手を強くふると
テーブルにおちて
足をばたつかせ
ひっくり返すと
指にしがみつく
弾くとおちて
もがいている

ようやく足が下になり
テーブルの端へ移り
見えなくなる

カップに湯をそそぐと
バタバタあばれている
掬うとくっつく
布巾にこすりつけると
歩き出し姿を消した

ティッシュペーパーを
取りだすと
また現れた

てのひら

 仕事場近くの居酒屋を、昼は海鮮丼など定食もあるので、ときどき利用する。隣の席の男性が、かなり出来上がっていて、店の奥にいる背広を着た客になにやら絡んでいる。たすき掛けした若い女性の店員が隣の席に近づき、会話は聞こえないが、たしなめている様子だ。
 ほどなく話しかけられた。お医者さんですか。いえ、治療のようなことはやっていますが。世の中、何が足りないと思いますか。すごい質問ですね、思いやりでしょうか。思いやりですか、ことばではなくて。ことばはたいせつですが、そのおおもとの。勉強になりました。
 奥の客が帰るとき、先ほどの店員が謝っている。酔っている男性がトイレに立つと、すいませんねえ、酔っ払っているようでと、こんどはこちらを気遣ってくれる。
食べおわり席を立ち会計しようとすると、いつものように、レジから歩み寄ってきて少し腰をかがめ、両手でお金を受け取って精算してくれた。

星からの贈り物

    かたちあるもの
    いつか
    かたちなきもの
    とわに

    *


 星の瞬きをつつむ
 微かな若緑のひびき
      目をとじれば
       香る ひかり

 

         *

      かがやくもの
    やみに
     とざされたとき
    やみが