五行歌
静かに
坐る
見ることを
歩くことを
奪われても
*
床を叩き
泣きじゃくる
そう
立つときは
ひとり
名もなき花
夜空焦がす
鐡花火
生命の水も
枯れはてて
息をふさぐ
熱気流
母を呼ぶ声
子を求む声
うつむく人
降り射す太陽は
光やわらげ
背をあたため
吹きつける風は
冷たさを秘め
頬をなで
突き刺さす眼差しは
深く息をはき
遠くいたわり
静かに照らす月は
顔をあげて歩く
その日をまもる
てのひら
仕事場近くの居酒屋を、昼は海鮮丼など定食もあるので、ときどき利用する。隣の席の男性が、かなり出来上がっていて、店の奥にいる背広を着た客になにやら絡んでいる。たすき掛けした若い女性の店員が隣の席に近づき、会話は聞こえないが、たしなめている様子だ。
ほどなく話しかけられた。お医者さんですか。いえ、治療のようなことはやっていますが。世の中、何が足りないと思いますか。すごい質問ですね、思いやりでしょうか。思いやりですか、ことばではなくて。ことばはたいせつですが、そのおおもとの。勉強になりました。
奥の客が帰るとき、先ほどの店員が謝っている。酔っている男性がトイレに立つと、すいませんねえ、酔っ払っているようでと、こんどはこちらを気遣ってくれる。
食べおわり席を立ち会計しようとすると、いつものように、レジから歩み寄ってきて少し腰をかがめ、両手でお金を受け取って精算してくれた。
星からの贈り物
かたちあるもの
いつか
かたちなきもの
とわに
*
星の瞬きをつつむ
微かな若緑のひびき
目をとじれば
香る ひかり
*
かがやくもの
やみに
とざされたとき
やみが
E Più Ti Penso
花の潮みちて
ひかりあふれ
声つつむ翼は
風に舞い
太古の海原
かがやき響き
青ふかき夜空に
うたを待つ