E Più Ti Penso
花の潮みちて
ひかりあふれ
声つつむ翼は
風に舞い
太古の海原
かがやき響き
青ふかき夜空に
うたを待つ
小さな旅
駅から家までは十五分とかからないのでいつもは歩くが、荷物の多いときや雨の日は市内循環バスを利用する。十四ある座席もふくめて定員は二十名ほどの小型バスで、乗客どうしの間合いもちかい。初めて席をゆずられたのがこのバスだ。
冷えこみがつづいたあとの、よく晴れたおだやかな日、乗車し出発を待っていると、母親と、小学校高学年だろうか、息子とおぼしき二人連れが乗りこんできた。
このバスは初めてのようだ。運転手に、一周してまた乗りつづけて、もう一回廻ってもいいか尋ねている。何周してもよいこと、夏場などは空調がきいて涼しいので路線によっては市内見物をする人がよくいることなど、説明をうけている。運転席の裏側に二人がいたので、一番後方の少し高くなっている座席のほうがながめはいいと移動することをすすめている。
そんなやりとりを聞きながら他の乗客も二人の方を見たり、たがいに笑顔で目配せする。
お年寄りが、自分が行きたい場所の最寄り停留所はどこかと聞いている。このバスではなく、同じこの乗場から、二つ後に出る他の路線に、その停留所はあると大きな声で説明し、乗るときその路線の運転手に確認するよう言いそえ、お年寄りも納得したようだ。
運転席に戻ると乗車ドアとは反対側の窓をあけて身を乗りだし何か叫んでいる。制服姿の若い人が近づいてきた。近くに待機中の、二つ後に発車する路線バスの担当運転手だ。さっきのお年寄りのことを、降りるバス停、目的地を伝えている。
定刻にバスは動き出し、車内にさしこむ木漏れ陽のなか親子の会話がはずむ。せまい道から大通りに出たところのいつもの停留所でおりる。写真を撮っておきたくなったが、手間取っているうちに、バスは角を曲がり走り去ってしまった。
Both a little scared Neither one prepared
白い花びらは
語りえぬことば
棘をたどり
ふりつもる
若草色の歌声は
光つよく朝をつげ
鐘の響きにおくられて
碧き谷間にこだまする
扉の鍵は胸のなか
だれもふれえぬ鉛色
祭りのあとの空車
白馬に曳かれ闇をゆく
歩みためらう足取りは
地をたしかめるあかし
うけとめるてのひらに
いのちをきざむ紅い花
カナリア色の風そよぎ
瞳のなかにうつる影
雪の調べは春さそい
とざされた詩がよみがえる
囁く石
だれも振りむかないとき
そっと見まもる空
だれも聞いてくれないとき
しずかに耳かたむける道
だれも声をかけないとき
ちいさく囁く石
だれも伴に歩くもののいないとき
ゆれる草むらを行く蝸牛
だれも支えてくれないとき
さりげなく肌をさしだす樹
だれも抱きしめてくれないとき
あたかくつつむ陽の光
だれも背中を押してくれないとき
やわらかに訪れる風
だれも諍いを止めないとき
とうめいな音を奏でる笛
だれもいないとき
きみのなかで瞬く星